【ボール盤とは】

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金属などの素材に穴をあける際には、ボール盤と呼ばれる工作機械が使われます。穴あけ加工を行える工作機械としては、ボール盤のほかにもフライス盤や旋盤などがありますが、ボール盤はどのような特徴を持っているのでしょうか。
この記事ではボール盤の概要や種類ごとの特徴、ボール盤で行える加工方法、具体的な使い方の手順などについてご紹介します。

ボール盤とは

ボール盤は金属や樹脂、木材などの素材に 穴をあけたり、掘り広げたりするための工作機械です。ボール盤の本体には、回転するチャックにドリルやリーマ、ホールカッターなどの切削工具を装着して上下させる機能と、テーブルやクランプなどの加工物を固定するための機能があります。

旋盤やフライス盤などでも穴あけ加工は行えますが、ボール盤はより穴あけに特化しています。まっすぐ正確な穴あけを、他の工作機械を使うよりも素早く行えるのが、ボール盤を使用するメリットです。材料はテーブルに固定するため、ドリルがブレることもありません。
また、穴あけだけでなく、中ぐりやリーマ、ねじ切りなどの加工にも対応できます。

ボール盤の種類

直立ボール盤

垂直に上下する主軸を持ち、床に直接据え付けて使うボール盤です。一般的に「ボール盤」といった場合は、直立ボール盤のことを指します。チャックを取り付けてストレートシャンクのドリルを固定したり、テーパーシャンクドリルを取り付けたりして、穴径13mm~50mm程度の穴あけ加工が可能です。
加工物を固定するテーブルの形状は丸型や角型で、テーブルに加工物を固定して、穴あけの位置は加工物を動かしながら調整します。 主軸を素材に近づける送り動作は、手動レバーを使う手送りと自動送りの両方に対応していて 、主軸の回転数は変速レバーを使って調整します。

多軸ボール盤

多数のドリル軸があり、同時に複数の穴あけを行えるボール盤です。大量生産に適していますが、汎用機としてではなく、特定の製品の製造工程における決まった作業の専用機として用いられる場合がほとんどです。

ラジアルボール盤

主軸頭を着けたアームが旋回し、主軸頭も水平方向に移動できる構造のボール盤です。主軸頭の旋回と水平移動で位置決めが行えるため、加工物を動かさずに複数の穴あけができます。アームを動かすことで、大きな加工物に連続して穴をあけることも可能です。

深穴ボール盤

深い穴をあけることに特化したボール盤で、穴径の10倍以上の深さがある穴をあけることもできます。もともとは猟銃や小銃に穴をあけるために開発された機械で、ガンドリリングマシンや深穴加工機と呼ばれることもあります。

タレットボール盤

タレットと呼ばれる回転式の刃物台が取り付けられていて、複数の工具を装着できるボール盤です。
タレットにあらかじめドリルを複数取り付けることで、工具を取り換えずに連続加工が行えるため、作業時間を短縮できます。

 

ボール盤を使った加工方法

ボール盤は、取り付ける切削工具を取り換えることでさまざまな加工を行うことができます。ボール盤を使った加工方法の例を、いくつかご紹介します。

穴開け加工

ドリルを使って加工物に穴をあける、ボール盤の基本的な使い方ともいえる加工です。ドリリングとも呼ばれ、無垢の穴あけであるソリッドドリリング加工や、穴の中心に円筒を残しつつ大径の穴をあけるトレパニング加工などの種類があります。

中ぐり加工

ドリルを使ってあけた穴の内径を広げて、寸法精度を出すための加工です。加工には中ぐりバイトと呼ばれる切削工具を使います。
加工面が見えにくく音を頼りに寸法の判断が求められる場合がある、切りくずが内部に溜まりやすく傷つきやすいなど、加工には一定の技術が必要です。

座ぐり加工

「座ぐり」とは、ボルトやねじの頭部が製品面から出っ張らないように掘り下げた凹み穴のことです。座ぐりを作る加工のことを座ぐり加工、座ぐり加工に使うドリルを座ぐりドリルと呼びます。
座ぐり加工でできる穴は入り口の辺りに広い段付きの穴になり、主に六角付きボルトを使う際に行われる加工です。

リーマ加工

リーマと呼ばれる切削工具を使い穴の内径を薄く削ることで、ドリルであけた穴の精度を高める加工です。
加工精度が低下する原因になるため、主軸やチャックなどの振れやがたつきがある際は、調整または剛性の高いものに交換する必要があります。また、加工物の下穴の口が水平になっているか確認したうえで作業することも重要です。

ねじ切り・タッピング加工

ドリルであけた穴にタップを挿し込み、めねじのねじ山を作る加工です。タッピングや タップ立てとも呼ばれます。ねじ切り加工は自動送りのあるボール盤だけでなく、タップハンドルと呼ばれる手動工具にタップを取り付けて行うこともあります。
ねじ切り加工は抵抗が大きいため、加工物が確実に固定されているかどうかを確認してから作業を開始することが大切です。

ボール盤で使われるドリルの種類

ツイストドリル

ねじれがある一般的なドリルのことです。ねじれから切りくずを排出します。材質や構造、ドリルを固定するシャンクの形状などにいくつか種類があります。

面取りドリル

 

センタードリル

剛性があり、全長が短い点が特徴のドリルです。加工物にいきなり穴あけを行うと、ドリルの刃先が滑り位置ずれや穴曲がりの原因となります。センタードリルを使用してセンター穴をあけておくことで、これらの不具合を防ぐことが可能です。

ボール盤の使い方

具体的に、ボール盤を使った穴あけ加工は、どのような手順で行えば良いのでしょうか。ボール盤の使い方の手順は、以下の通りです。

1.穴をあける位置を決め、ポンチなどで印をつける
2.ボール盤の主軸にドリルを取り付ける
3.ドリルの軸が穴径の中心になるように合わせる
4.加工物をテーブルに固定する
5.ドリルを空転させ、振れがないことを確認する
6.ドリルをゆっくりと加工物に当て、穴あけを行う

目標となる穴径が大きい場合は、穴あけ後に取り付けているドリルを交換してから、さらに穴あけを続けます。安全のために、ボール盤のスイッチを切った後に回転が停止するのを待ったうえで、工具の交換を行ってください。
また、穴あけ加工後はバリ(金属の返り)が発生します。バリ取りを行うのも、ボール盤できれいに加工するためのコツです。

ボール盤を使う際のポイント

精密に穴をあけられるボール盤は、多くの製造業の工場で使用されていますが、間違った使い方をすると加工精度が落ちたり、怪我につながったりする恐れがあります。一般的な穴あけ作業の際に注意したいポイントを押さえておきましょう。

ドリルを確実に取り付ける

加工を行う前に、ドリルを確実にチャックに取り付けることが大切です。チャックをしっかりと締めていないと、ドリルが空転してシャンクやチャック内部が傷んでしまいます。 チャックにチャックハンドルを差し込む穴が3つあるタイプのものでは、3か所すべてでチャックを締めることが重要です。
また、ボール盤によってはドリルチャックが付いていないことも考えられます。ボール盤の取り付け形状は、ドリルチャックをそのまま取り付けできる「JT(ジャコブステーパ)」と、チャックアーバを取り付けたうえでドリルチャックを装着する「MT(モールステーパ)」の2種類に分けられます。使用するボール盤がどちらの形状なのか、事前に確認しておくと良いでしょう。

軍手を外しておく

ボール盤を使用する際は、軍手や作業用手袋を外しておく必要があります。これは、布地がドリルに巻き込まれた際に引っ張られ、怪我や事故につながる恐れがあるためです。 長髪の方は髪の毛が巻き込まれる場合もあるので、頭の後ろで束ねておくか、帽子を被って髪が垂れないようにしてください。

保護メガネをかける

金属素材の穴あけ加工を行う際は、切りくずが伸びてドリルの回転と共に回ったり、飛散したりする恐れがあります。切りくずによるけがを防ぐために、保護メガネをかけて目を守ることが大切です。

適切な回転数で使用する

ドリル径や素材の硬さなどによって、適切な回転数や送り速度は異なります。メーカーのカタログ表記を参考にしたうえで作業を行ってください。回転数を変換させる際は、卓上ボール盤の場合は、ベルトを掛け替えて行う方法が一般的です。 また、穴が貫通する際は急な食い込みが起こりやすいので、ドリルの送る力を弱くするなどの対処が必要になります。

加工物を固定する

加工物を固定せずにボール盤で加工を行うと、ドリルの回転力によって加工物が振り回される恐れがあります。クランプやバイス(万力)を活用して、必ず加工物を固定するようにしてください。

ポンチでセンター穴を打つ

ボール盤で穴をあける際は、穴あけ位置を正確に決める必要があります。しかし、前準備なしに加工を行うとドリルの先端が狙った場所から逃げてしまい、正確な場所に穴をあけることができません。 正確に穴あけを行うために、ポンチやセンタードリルなどで目的の位置を決めておくことが大切です。

まとめ

ボール盤は穴あけ加工を始め、リーマ加工やねじ切り加工にも活用できるなど、用途が幅広い工作機械です。特に穴あけ加工においては、確実かつ容易に垂直な穴あけをできるという点で優れています。

ボール盤を活用して穴あけ加工を行う際は、加工方法や加工物の大きさや材質に応じて適切なボール盤と切削工具を選定することが重要です。また、加工物をしっかり固定することは切削加工全般において安全な作業の第一歩でもあります。適切な工具の選定や加工物を固定するなど、安全に配慮したうえでボール盤を活用しましょう。

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